Claude Code の Skills は、名前のせいで開発者向けの機能に見えます。 実際、検索して出てくる解説のほとんどはコード生成の文脈です。ところが、うちで一番効いたのはコードとまったく関係のない場所でした——応募文、営業リスト、請求書、議事録。つまり、毎回同じ説明を書いていた業務です。
CLAUDE.mdに会社のルールを書くところまでは、以前に書きました。会社の前提——うちは何の会社か、誰が社長か、数字は捏造しない——をファイルに置いておけば、毎回説明せずに済む。ここまでは想像がつきます。
それでも「また同じ説明をしている」は消えませんでした。
CLAUDE.mdでは消えなかったもの
残ったのは、前提ではなく手順でした。
「応募文は800字で、実績カードから2枚選んで、最後に橋渡しの一文を入れて」。この指示を、応募のたびに書いていました。CLAUDE.mdに書けばいいと思われるかもしれません。ただ、CLAUDE.mdは毎回まるごと読み込まれるファイルです。営業もマーケも経理も全部の手順をそこに書くと、記事を1本書くだけのときにも請求書の手順を読むことになります。
手順は、必要なときだけ開かれてほしい。この一点がSkillsの存在理由でした。
| CLAUDE.md | Skills | |
|---|---|---|
| 読まれるタイミング | 毎回、必ず全文 | 関連する依頼のときだけ |
| 書くもの | 会社の前提・禁止事項・全体の地図 | 特定の仕事の手順と判断基準 |
| 分量の上限 | 短いほどよい(毎回のコストになる) | 長くてよい(開かれる回数が少ない) |
| 増やすと | 全部の作業が重くなる | 重くならない |
この違いが分かると、置き場所の判断が一気に楽になります。「どの仕事にも効くならCLAUDE.md、特定の仕事にだけ効くならSkills」。うちはこの一行で切り分けています。
実際に動いている15個
現在うちで動いているスキルは15個です。部署ごとに並べるとこうなります。
| 部署 | スキル | やること |
|---|---|---|
| 秘書室 | morning-brief / notion-task-add / notion-minutes-add / session-title-refresh | 朝の段取り、タスク登録、議事録のDB登録 |
| 営業部 | hipro-scout / gig-application | 新着案件の巡回、応募文の作成 |
| 開拓部 | sales-prospect-list | 実在確認済みの営業リスト作成 |
| 制作部 | slide-design / milky-article / milky-owner-tasks | 提案資料のデザイン、クライアント記事 |
| マーケティング部 | rescale-blog / youtube-manager | 自社ブログ、YouTubeの企画・台本 |
| カスタマーサクセス部 | customer-success | オンボーディング、顧問の進行 |
| 管理部 | finance-accounting | 見積・請求のドラフト、経費記録 |
| 新規事業部 | venture-factory | 事業アイデアの審査・検証 |
加えて、頻繁に呼ぶ組み合わせを短縮したスラッシュコマンドが9本(/apply『応募一式』、/mail『客先メールの下書き』など)と、大量に読んで短く返す調査役のサブエージェントが3体あります。
並べると立派に見えますが、この15個は一度に作ったものではありません。同じ説明を3回書いた時点で1個作る、を繰り返しただけです。順番も計画していません。応募が続いた週は営業のスキルが増え、納品が続いた週は制作のスキルが増えました。
作り方は4ステップしかない
スキルの実体は、~/.claude/skills/<名前>/SKILL.md というMarkdownファイル1枚です。冒頭に名前と説明を書き、あとは手順を日本語で書く。それだけです。実際に使っている応募文のスキルなら、こういう中身になります。
| 場所 | 書いてあるもの |
|---|---|
| 1行目 | name: gig-application(スキルの名前) |
| 2行目 | description: サンカク・HiPro等に送る応募文を作成する。「サンカクの応募文」「この案件に応募したい」といった依頼で使う。 |
| 3行目以降 | 応募文の作成手順。ただの日本語の文章で、特別な書式はありません |
プログラムではないので、書けるのは「文章として説明できること」だけです。逆に言えば、人に引き継ぐ手順書が書けるなら、そのまま1個作れます。
作るときの順番はこうしています。
- 直近で3回書いた指示を、そのままコピーする。 ゼロから書こうとすると手が止まります
- 迷いどころを表にする。 「800字か400字か」「実績カードをどれにするか」——判断が分かれる場所だけ表で書き切る
- descriptionに"呼ばれ方"を書く。 ここが一番重要で、後述します
- 1回使って、間違えたところを直す。 完成させてから使うのではなく、使いながら直す
3番だけ補足が要ります。description は「何をするスキルか」ではなく「どんな言い方で頼まれたときに開くか」を書く欄です。うちも最初は「応募文を作成するスキル」とだけ書いていて、まったく呼ばれませんでした。「サンカクの応募文」「この案件に応募したい」という実際に自分が使う言い回しを並べてから、狙いどおりに開くようになりました。
分量は、22行から488行まで開いた
作る前は「1個あたりどれくらい書けばいいのか」が一番分かりませんでした。実測はこうです。
| スキル | 行数 | 性格 |
|---|---|---|
| session-title-refresh | 22行 | やることが1つだけ |
| rescale-blog(この記事もこれで書いています) | 54行 | 方針とトンマナが中心 |
| notion-task-add | 78行 | 手順+登録先の指定 |
| gig-application | 188行 | 判断が分かれる場所が多い |
| slide-design | 488行 | 配色・レイアウト・図解の型まで持つ |
中央値は87行でした。原稿用紙にして2枚強です。この数字を先に知っていれば、うちも最初の1個を書くのに悩まずに済んだはずです。
長くなりすぎたスキルは、参照ファイルに逃がします。gig-application は本体188行のほかに references/achievements.md(実績カードの一覧)を持っていて、本体からはそこを見るよう指示するだけにしています。営業リストのスキルも同じ構造で、判定基準のプリセットを別ファイルに置いています。本体は判断を書く場所、referencesは事実を置く場所、という分け方です。
事実を別ファイルにしておくと、実績が増えたときに直す場所が1箇所で済みます。これは効きました。
増やすほど良いのか
ここが、正直まだ答えを出せていないところです。
15個まで増やしたことで、明らかに速くなった実感はあります。一方で、似た名前のスキルが2つあると呼び分けを間違えることも起きました。うちで実際に起きた失敗を3つ挙げます。
① 似たスキルを2つ作ってしまった。 自社ブログとクライアント記事で別々のスキルを作ったところ、どちらを使うべきかが曖昧になりました。今はお互いの description に「クライアント記事は milky-article が担当(混同しない)」と相手の名前を明記して排他にしています。
② やったことのない仕事をスキルにした。 これが一番まずい失敗でした。判断基準が空のまま手順だけが書かれているので、それらしい嘘が量産されます。実績が2〜3回たまってから作る、を後からルールにしました。
③ 数字を本体に直接書いた。 実績の件数をスキル本体に書いてしまい、更新のたびに複数のファイルを探すことになりました。今は「同じ数値を2箇所以上に直書きしない」を全社ルールにしています。
3つとも、共通しているのは「先回りして作った」ことです。
最初の1個をどこから作るか
これから作るなら、今週すでに2回書いた指示を探すところから始めるのが一番速いはずです。営業でも経理でも記事でも構いません。うちの15個も、全部そこから始まっています。
作る順番として迷うなら、Claude Codeでできる業務一覧に業務カテゴリ別の整理があります。会社の前提そのものがまだファイルになっていない場合は、Skillsより先にCLAUDE.mdを書くほうが効きます。役割の設計から入りたい場合はAI社員のつくり方が入口になります。
冒頭の問いに戻ります。Skillsは開発者向けの機能なのか。機能としてはそうです。ただ、うちで一番働いているスキルは、コードを1行も書きません。